
キム・ギョンフン代表の歓迎のあいさつ。9月のDevDayの発表を一枚にまとめたスライドだ。
私が受け取った今回のイベントのメッセージは、ハーネスを自分でエンジニアリングするより、OpenAIが運用するハーネスの上でサービスを作ることに集中しろというものだった。10月22日にソウルのラウムアートセンターで開かれたOpenAI DevDay Exchangeに参加して、そう感じた。AIをテーマにしたイベントに足を運んだのは、これが初めてだ。内容のほとんどは9月にすでに公開されたものだったが、四つのセッションを聞くあいだ、ハーネスを借りて使うビルダーと、会社のハーネスを作るソフトウェアエンジニアの立ち位置が分かれつつあるという考えが頭から離れなかった。その境目は、結局ハーネスを誰が所有するかで決まる。
#初めて行ったAIイベント
詳しいスケジュールが事前に共有されていなかったので、2時に始まるものと思って1時30分ごろに着いたが、入口にはもう列ができていた。2時に入場してからは軽いケータリングをつまみながら一人二人と話をし、メインプログラムが始まったのは3時になってからだった。
DevDay Exchangeは、9月にサンフランシスコで開かれたDevDayの内容を八つの都市に分けて届ける巡回イベントで、ソウルには600人を超える人が集まったという。私はメインステージでオープニング基調講演と、ループ、プラグインのセッションを聞いた。歓迎のあいさつを除けば、発表はほとんど英語だった。基調講演とループのセッションはそのまま聞けたが、三人目の発表者の話があまりに速く、プラグインのセッションではとうとう同時通訳の受信機を耳に差した。
ここで言うハーネスとは、モデルをエージェントとして動かす実行の枠組みのことだ。ツール呼び出しや権限、コンテキストの管理、失敗したときのやり直し方まで、モデルの外側でエージェントを動かす部分を指す。アルバート・イップの基調講演は、DotsとChatGPT Space、GPT-6.1 Solとともに、Codexの実行環境をマネージドサービスとして開くAgents APIを紹介した。ボニー・チャタジーのセッションのタイトルはWhat Comes After Loops?(ループエンジニアリングの次に来るものは?)で、モデルを繰り返し呼ぶループ一つでエージェントを作っていたところから、複数のエージェントが協業する構造へ移っていく流れを扱った。その出発点として、彼女はCodexのエージェントをモデルとハーネスの二つの箱に分けて描いた。モデルは推論して次に何をするかを選び、ハーネスは指示を保持してツールを実行し、結果を返す。コリー・チンのプラグインのセッションは、ChatGPTのプラグインを作って配布するまでを実演しながら、自分のサービスをChatGPTやCodexの中でユーザーに見つけて使ってもらう道筋を見せてくれた。

ループのセッションのスライド。一つのゴールを四つのエージェントチームが分担し、各チームの結果が一つの答えにまとまる。
#HarnessとAgents APIでサービスを作る
4時45分には二つのうち一つを選ばなければならなかった。メインステージではSitesのセッションが、ブレイクアウトではHarnessのセッションが開かれた。最近は自分の作業用のハーネスを自分で組んでいるので、迷わずブレイクアウトへ移った。セッションのタイトルはHarness-as-a-Serviceで、韓国語のタイトルは「HarnessとAgents APIでサービスを作る」だった。イ・ジェウォンとキム・ジョンウォンの二人のエンジニアが交代で受け持ったこのセッションは、メインステージと違って韓国語で進んだ。イ・ジェウォン氏は、Responses APIでモデルの推論機能を提供していたところから出発して、エージェントが実行され管理される環境全体をサービスとして出す段階まで来たと話したあと、Responses APIを使ったことのある人、Chat Completionsを使ったことのある人に順に手を挙げさせた。

ブレイクアウトステージのHarnessセッション。メインステージより小さな部屋だった。
続いてキム・ジョンウォン氏は、去年Agents SDKを出したころまでは、開発者はハーネスを自分で作って組み立てたいものだと考えていたと打ち明けた。ところが繰り返し返ってきたフィードバックは、Codexに良いハーネスがあるのになぜサービスとして提供しないのかというもので、その答えがAgents APIだという。いちばん下にResponses APIがあり、それを組み合わせて作ったハーネスがCodexだ。その上にAgents APIが、最上段に開発者のアプリケーションが載る。Agents APIでは、開発者が任せる仕事と指示、ツール、環境を選び、それに合うハーネスはOpenAIが保守する。モデルが良くなるたびにハーネスを組み直す負担も、少なくともOpenAIのモデルに限っては大きく減るだろうという説明も添えられた。ハーネスを自分で組んだことのある人なら、モデルが変わるたびにプロンプトとツールの構成を合わせ直す作業がどれほど頻繁に回ってくるかを知っている。私もそのくだりではうなずいた。

Harnessセッションの階層構造のスライドを書き写した。Responses APIの上にCodexが、その上にAgents APIとアプリケーションが積み上がる。
CodexのハーネスをAPIとして出すまでに越えなければならなかった課題として、三つが挙げられた。一つ目は実行環境だ。ローカルで動いていたCodexと違い、Agents APIはOpenAIがホストするサンドボックスか顧客が指定したサンドボックスに仕事を送って結果を受け取る必要があるので、ハーネスと、作業が実行される場所を切り離した。二つ目は、エージェントのしていることをユーザーに見せる方法だ。この部分を引き取ったイ・ジェウォン氏によると、Responses APIで製品を作っていた社内チームが、決済失敗の原因を探す段階とタイムアウトを延ばして試し直す段階の二つを、ツール呼び出しとその結果のまとまりとして見たがったので、Agents APIにターンという単位を入れたという。三つ目は、ふたたびキム・ジョンウォン氏が説明した、何日も回り続ける作業だ。コンテキストの圧縮をAPIの中で標準で処理し、サーバーが落ちて立ち上がり直しても、進行中だった作業と成果物の状態を引き継いで続きから働けるようにした。

三つの課題を開発者側の言葉に置き換えたスライドを書き写した。上から、すでに運用している環境をそのまま使う、役に立つ進捗を見せる、セッションをすべて任せる、という意味だ。
OpenAIが受け持つ部分と開発者が受け持つ部分の区別は、ドキュメントのほうにもっと直接書かれている。Agents APIは9月10日にパブリックベータとして公開された。その紹介記事には、OpenAIがハーネスをホストして保守するので、開発者は自分のエージェントならではのツールと知識、ワークフローに集中してほしいと書かれている。エージェントのガイドの比較表はもっと露骨だ。Agents APIはOpenAIが管理するCodexのハーネスで動き、連携の負担が低い。反対の端にあるResponses APIは、モデルを直接呼ぶときやエージェントを一から作るときに使うもので、連携の負担が高い。
デモは、仁川からサンフランシスコへ向かう架空の便が欠航した場面だった。乗客12人、予約18件のうち、明日の午前の出発を希望する一人旅の乗客と、子どもが保護者の隣に座る必要があり、近くの空港に降りるならレンタカーを希望する4人家族を選び、二つのケースにセッションを一つずつ別々に立ち上げた。セッションにはResponses APIで使っていた空席照会のツールと航空券の予約に必要なスキルを入れ、座席の条件と到着の条件は二つのサブエージェントが分担して検討した。セッションを作るコードは短く、環境をOpenAIがホストするサンドボックスにして、ネットワークへのアクセスを切ったまま結果をストリーミングで受け取った。結果は代替便の提案を収めたJSONファイルで返ってきて、最後の予約変更は人が承認した。途中でローカルに立てたデモサーバーが落ちると、イ・ジェウォン氏は皆さんのお祈りが足りなかったようですと笑い、スライドで説明を続けたあと、発表の終わりにもう一度ステージに上がってデモを終えた。

再予約デモのセッション作成コード。環境はOpenAIがホストするサンドボックスで、ネットワークは塞いである。
このセッションでいちばん印象に残ったのは、デモが止まっているあいだにイ・ジェウォン氏が続けた説明だった。同じことはResponses APIでも十分にできるが、そうするといつ人が介入するか、エージェントをどこで実行するか、進捗をどう見せるかを一つずつ自分で面倒を見なければならない。Agents APIを使えば、開発者は予約をどんな基準で変えるか、いつ人が承認するかに集中すればよいと彼は言った。その前にターンを説明したときにも、ハーネスをサービスとして出すなら、どこまで任せて開発者が何を自分で受け持つか、その境目を一つずつ詰めなければならないと話していた。
#ハーネスを借りる側と作る側
私はこの二つのAPIの違いが、使う人の立ち位置を分けると読んだ。ビルダーはアイデアを素早くサービスにする人で、彼らにとってはCodexのハーネスをできるだけそのまま借り、プラグインとAgents APIでつなぐ道が効率的だ。ビルダーには歓迎すべき知らせだ。ソフトウェアエンジニアには、まずあいまいな点が引っかかる。ハーネスまでCodexが受け持つなら、エンジニアには何が残るのかという問いだ。ただ、ある意味では今回の発表が、その残る場所をよりはっきり線引きしてもくれた。発表者が開発者に残した部分、つまり予約をどんな基準で変えて、いつ人が承認するかは、Agents APIを使っても会社が決めるルールだ。マネージドAPIが提供する機能と接続だけでそのルールを会社のやり方どおりに強制するのが難しいなら、発表者がResponses APIでやれば自分で面倒を見なければならないと言った仕事が、エンジニアの持ち分として戻ってくる。私が聞けなかった顧客セッションでも、AWSが、小さな業務から始めて範囲を広げ、アクセス権限と使用量、コストを企業のセキュリティポリシーとガバナンスに合わせて管理するよう勧めたという。
その立ち位置を分ける基準は、ハーネスを誰が所有するかだ。マネージドのハーネスを使えば早く作れるが、コストと制御を思いどおりにするのは難しいかもしれない。自分で作ればその二つを握れる代わりに、それだけの開発と保守を背負う。だから最初に見るべきなのは、マネージドAPIが提供するツールと環境の接続だけで要求を満たせるかどうかだ。それでも社内のハーネスが必要な場面は残る。アクセス権限を社内の権限体系や監査記録に結びつける必要があるとき、使用量とコストをチームや機能の単位で統制する必要があるとき、マネージドのハーネスが扱わない特化したツールやデータが業務の中心にあるときだ。こうした持ち分が大きくなるほど、マネージドのハーネスを包む、あるいはResponses APIの上に組む社内ハーネスをプラットフォームとして提供する仕事がエンジニアに回ってくる。当面はマネージドのハーネスのほうが人気を集めるだろうが、自前で作ったハーネスがいつかまた話題になるかもしれない。そのときの社内ハーネスは扱う範囲を絞り、会社の権限とコストのルールにはより深く結びついた姿になると思う。
ただ、これは誰にでも当てはまる話ではないし、発表者が言ったことでもない。Agents APIにも顧客のサンドボックスや自前のツールをつなげるので、会社に必要な統制のためにハーネス全体を作らなければならないわけではない。同じセッションの最後には、キム・ジョンウォン氏がCodexのハーネスとモデルをAWS Bedrockでもパブリックプレビューとして使えるようになると述べ、データとコンピューティングをAWSのインフラの中に置けると紹介してもいた。マネージドと自前構築のあいだの選択肢は、思ったより広い。ハーネスを任せろというメッセージは、OpenAIにとって都合のよいメッセージでもある。ほかの参加者のレポートにも、発表全体をOpenAIに全部任せろという話として読んだものがあった。上の考え方も、AIの側へ移りつつあるバックエンドエンジニアが立てた一般論で、この基準は自分で検証したものではない。今後チームでビルダーがCodexで作ったものを社内のハーネスに移すことになったら、何を変える必要があったかを、権限、コスト、観測の順に書き残してみるつもりだ。
この1年は、バックエンドエンジニアが置き換えられるという話のほうが大きく聞こえていたし、バックエンドエンジニアとして働いてきた私もその話と無縁ではなかった。今回のイベントでは、エンジニアが会社の基盤となるハーネスを構築して管理する方向に舵を切れるかもしれないと思えたし、初めて行ったAIイベントから持ち帰ったのもその考え一つだ。ビルダーはハーネスを借りて使い、エンジニアは会社のハーネスを作る。今回の発表が、二人の領域を以前より少しはっきり分けたのは確かだ。
#本筋の外の話
Harnessセッションで紹介された顧客事例は、NotionとRakuten、Bainだった。発表者はそのうちベイン・アンド・カンパニーの事例がほかの事例より少し面白かったと言っていて、架空の顧客ペルソナを作り、新製品についてのアンケートの回答を前もって集めるのにAgents APIを使っているそうだ。私が聞けなかったSitesとGPT-Liveのセッションのデモ、Codexのセキュリティのセッションの概要は、デジタル朝鮮の現地記事が書き留めている。
OpenAIコリアのキム・ギョンフン代表は歓迎のあいさつで、韓国はDotsの週間アクティブユーザー数で世界3位、ChatGPT Proのユーザー数で世界5位圏だと話した。韓国の開発者のフィードバックが反映された例としては、CodexのLinux対応と、一つのプロジェクトで複数のフォルダを扱う機能、モバイル環境の改善を挙げた。あいさつの最後には、参加者にChatGPT Pro 100プランの30日分をイベントの記念として贈ると言った。このひと月はCodexであれこれ思い切り試してみるつもりなので、もう楽しみにしている。
#参考資料
- Agents APIの紹介 (OpenAI、2026.09.10)。CodexのハーネスとインフラをパブリックベータのAPIとして開き、OpenAIがハーネスをホストして保守すると明らかにした記事。
- Agents (OpenAI APIドキュメント)。Agents APIとAgents SDK、Responses APIを、実行場所と連携の負担で比べたガイド。
- OpenAI「DevDay Exchange: Seoul」現場 (デジタル朝鮮)。ソウルでのイベントのセッション構成と、Sites、GPT-Liveのデモを詳しく伝えた韓国語の現地記事。
- OpenAI DevDay Exchange 2026。8都市の日程とイベントの形式を紹介する公式ページ。